070: 微心行路難(断欠)
目次 < >

約六九行を存す。無心の境地を、定格聯章曲子のリズムを借りて歌ったもの。各聯章のはじめに、「君不見」の三字がある。「行路難」とよばれる歌曲は、すでに梁の傅大士に帰せられるものがあり、『続高僧伝』および『宋高僧伝』によると、北周の慧命や唐の慧忠にその作品があったとされるが、作品そのものは敦煌資料によってはじめて知られるようになった。本書は、断片ながら唐代の作品のうち、もっとも確かなものの一つ。慈覚大師の『入唐新求聖教目録』に「徴心行路難」とあるのにアイデンティファイしての命名。「行路難」の文学史的意義につい トは、同じ定格聯章の「五更転」や「十二時」とあわせ論じた入矢義高の「徴心行路難――定格聯章の歌曲について――」(『塚本博士頌寿記念仏教史学論集』)を見よ。ただし、いずれも目下は大半が断片で、今後に多くの課題を残す。また「行路難」の作品は、別に次の数点が知られる。

○ スタイン三〇一七

○ ペリオ三四〇九(『敦煌曲』 Airs de Touen-Houang. Mission PAUL PELLIOT: documents conserves a la BIBLIOTHEQUE NATIONALE II)